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大腸の特徴
大腸の特徴としては、内容物と細菌を含めた「中身」がないと機能を発揮できないと言うのがあります。
そして、もう一つの大きな特徴として、他の器官に依存しない、エネルギー源と情報処理システムを備えているというのがあるのだそうです。
一般の細胞は、いろいろな仕事をこなしたり、分裂したりするために使うエネルギーを血流に乗ってやってくる、ブドウ糖や脂質等から得ていますが、大腸の粘膜細胞は、大腸内の細菌が作る「酪酸」(すんごくくちゃいの(^^;)という脂肪酸を吸収して、そのまま自前のエネルギー源として利用するのだそうです。
当然、大腸にやってきている血流にもブドウ糖等のエネルギー源はありますので、それもちゃんと使っているそうです。
大腸をはじめとする消化管の粘膜というのが、すんごくエネルギーを消費する細胞なので、血流で運ばれてくるブドウ糖等では、とても足りないんだそうで、大腸の粘膜細胞も吸収した酪酸を、他には内緒で(^^;自分で使ってしまうんだそうで、結果、大腸から出ていく血液にはほとんど酪酸が入っていないのだそうです。
この酪酸というのは非常に重要でして、これがないと、ナトリウムや水の吸収がうまくできなくなってしまうのだそうです。
抗生物質を飲むと下痢を起こしやすくなるのは、抗生物質によって、腸内細菌が減ってしまって酪酸が出来なくなるので、水の吸収が出来なくなるからだそうです。
大腸系の手術をするときなどは、腸内細菌による感染を防ぐために、抗生物質で絨毯爆撃をしかけ、浣腸という核弾頭を打ち込み(^^;綺麗さっぱり掃除をした上に、静脈に直接栄養を送り込んだり、小腸で完全に消化吸収される栄養剤を使って、細菌の食料を断ってしまうという徹底的な壊滅作戦が実行されるそうです(^^;
この大腸粘膜細胞が酪酸のエネルギーを使っていると言うのを発見したのはオーストラリアの大学付属病院で外科医をしていた、ウィリアム・ローディガー氏だそうで、大腸の手術後に起こる下痢を防ぎたいという医師としての願いがきっかけだったそうです。
酪酸のパワーは凄いものがあるそうで、ラットにコレラの毒素を与えて強烈な下痢を起こさせた後に酪酸を与えますと、大腸からの水分の分泌を抑えるどころか、水分の吸収をするようにさせることまで出来てしまうそうです。
大腸の特徴その2である、独自の情報処理系ですが、生体の情報処理系の大物と言いますと、神経とホルモン、免疫系とありますが、大腸はこれら全てを備えており、神経系ですと、「腸神経系」と言われる神経細胞の集まりが複雑なネットワークを構築しており、大腸の中身の量や化学組成の変化がこの系で処理され、大腸壁の動きや水分、粘液の分泌をコントロールし、大腸内の環境を最適な条件に整えているそうです。
腸粘膜には、膵臓や脳下垂体が作っているホルモンと同じ作用をもつ物質を作る「腸内分泌細胞」というのがあるそうですが、ホルモンの定義というのが、「内分泌腺で作られ、血液の中に放出され、血流に乗って、別の所にある細胞に作用するもの」という事らしく、消化管の粘膜で作られるホルモンの場合は、組織液の中にジワジワッとしみだしてきて、近くの細胞に作用することの多いらしいことから、この様な刺激伝達法の事を、内分泌に対して、「傍分泌」と呼ぶようになってきているそうです。
免疫の話の中で少し触れましたが、「盲腸炎」とか良く言われて、すぐに切られてしまう(^^;のが虫垂です。
この要無しの様に思われがちな器官は、実はリンパ組織の塊でして、免疫機能を担っています。
虫垂以外にも大腸の粘膜の下というのは、非常にリンパ組織が発達しており、免疫器官というと、脾臓が有名なのですが、大きさから言って、「大腸が人体最大の免疫器官」と言っている人もいるそうです。
大腸のリンパ組織では細胞分裂によってリンパ球が出来上がっていますが、大腸で出来たリンパ球は大腸にちゃんと戻って働くそうで、大腸リンパ組織が作り出している帰巣物質に引き寄せられているとのことですが、この消化管免疫については、拙作の「免疫の話」をご参照下さい(^^;;;
<P>食道や小腸というのは、どの動物でもただの管ですが、これが胃とか大腸になりますと、似ても似つかない形をしています(^^;
牛に胃に4室あるのは有名ですが、羊やカバも4室ありますし、カンガルーやラクダも3室、ハムスターなんかも2~3室に分かれているそうで、カンガルーやラクダの場合、分かれているだけでなくくびれやひだがたくさんあって結構複雑な形をしています。
内側も人の場合は、せいぜいひだがあるくらいですが、牛だと1~2センチの笹蒲鉾状の絨毛と言われる突起が全体にびっしり生えているそうです。
大腸の方ですが、どの動物も最後の方はすんなりとした細目の管(人で言うS字結腸から直腸あたりかな)なのですが、盲腸とそれに続く結腸の最初の部分の形は、動物によってえらく違います。
単純に分けると、肉食・虫食・吸血食の動物の場合は、単純な形をしていますが、植物を食べる動物、中でも消化しにくい草を食べる動物の場合は、この近位結腸の部分が大きいようです。とはいっても(偉い複雑な話に(^^;)、
盲腸と結腸の両方が発達している動物もいれば、結腸だけが発達している動物もいます。
大きさだけでなく(ますます複雑な話だ(^^;)、人なんかのようにくびれが出来ているのがあったり、モルモットのように内面に縦にひだが通っているのがいたり、ラットのように左右対称に斜めにひだが10対以上並んでいたり、絨毛が生えてたりと、とにかくえらく違います(^^;
大腸が大きくなったり、複雑な形をしていると、いろいろな種類の細菌が沢山住めるようになり、食べ物も長時間大腸に留まっていられるので、細菌による植物成分の分解がやりやすくなるのだそうです。
すなわち、牛や馬の様にセルロースの多い草だけを食べて立派な大人になるためには(^^;、消化管のどこかに微生物を沢山養わないと無理なのだそうです。
オーストラリアのヒューム博士は、消化管の進化を調べる研究から、微生物消化を主に行っているのが消化管のどの部分かということによって、哺乳動物を3つのグループに分けられることが出来るとしているそうで、登場が古いものから並べると、結腸発酵者・盲腸発酵者・前胃発酵者(牛などの反芻胃のこと)に分けられるそうです。
人がどこに所属するかと言いますと、前胃がある人いますか?(^^;
ということで、盲腸発酵か結腸発酵と言うことになりますが、人の盲腸は極めて小さいので、結腸発酵者と言うことになります。
このグループには犬なども所属していますが、犬と人では、人の結腸の方がぜんぜん長く、近位結腸の割合が9割(犬だと3割強程度)となっており、細菌が活躍している部分が犬より発達している事が特徴だということです。
これは、人が、植物繊維のような消化しにくい物質を消化する能力が潜在的には結構高い事を示しているんだそうで、「隠れ草食動物」とも言えるそうですが(^^;、食物繊維を消化する上で決めてとなる盲腸がチャチなので(^^;、真の草食動物への道は非常に険しいようです(^^;;;;;
大きさの違いからそれぞれの動物の食生活をうかがえるというのは何となく理解できますが、複雑な形の方はどうなんでしょう?
未知の動物の大腸を見つけるためには、まず盲腸を探すのだそうです。盲腸だけは、他の部分と違って袋状をしているので見つけやすいので、盲腸の横から入ってくるのが小腸で、盲腸とまっすぐにつながっているのが結腸となります。
ところが、盲腸の無い動物がいるそうでして、モグラなんかはこれに属するそうです。
この盲腸の無い動物の小腸と結腸の境目を見つける為のフランスのイブ・ルッケブッシュ教授のグループの研究によりますと、腸の動きを調べてみると、小腸から伝わってくる腸の動きがある地点を境にそれ以降には伝わらない場所が見つかりました。
この部分の筋肉組織を調べたところ、腸の外側を走っている筋肉にその部分で切れ目があることが判り、そこを境にそこよりも前(胃側)では、中身を肛門方向にだけ送る一方通行型の動きをするのですが、そこよりも肛門側では、往復型の運動をすることが判ったそうで、この往復運動をしている部分が、近位結腸になります。
同じ大腸でも、近位結腸と遠位結腸を分ける決定的な目印は、専門家の間でも確立していないらしいのですが、こういった動き方の違いが目印になりそうとのことです。
さて、複雑な形ですが、人や馬なんかですと、「結腸ヒモ」という筋肉細胞の束が3本通っています。
鯉のぼりを結腸に例えますと、口から尾に向かって縦に3本のヒモを通してある様な構造です。
このヒモがいつも少し縮んでいますので、トレーナーのウエスト部分のゴムヒモが通っている所のように、くびれたところと膨らんだところが出来上がっています(^^;
なんで、こんな形の方が良いかと言いますと、縮んでいる部分では、腸内の通路が膨らんでいるところよりも狭くなっていますので、中身の流れる速度が滑らかな管よりは、全体的に遅くなりますし、流れ方が複雑になります。
これによって、腸内細菌は、肛門から流れ出てしまう前に、増殖する時間を稼げますし、流れが複雑になるので、大腸内にさぁ~と流れていく川の早瀬の様な部分と、岸の複雑な形で出来る淀みの様な部分が出来たりで、性質の違った種類の細菌が何種類も同時に暮らしていける環境を作り出せます。
この様な仕組みは、ヒモと膨らみというのがかなりオーソドックスの様で多くの動物に見られるそうですが、マウスやラット等の場合は、結腸の内側に斜めのひだが十数対走るような形になっているそうで、これは、川に斜めに何本もの堤防を突き出して、流速を落としているのと同じ効果があるそうですし、当然流れも複雑になります。
このくびれやヒダヒダ(^^;が、中身の粒の大きさで、それらを選り分けているいるらしいことも判っているそうです。
モルモットが一番良く判っているそうなんですが、モルモットの場合、盲腸から結腸にかけて、トンネルの中の線路のような形で、2本のヒモが走っているらしいのですが、これによって断面がだるまさんの様な形になってます(くびれの部分が線路)、この線路と線路の間にある中身と、壁側にある中身では中身の性質がぜんぜん違うんだそうです。
線路の間の方は、大きな粒が無く、良く消化された小さな食べ物の粒や細菌が大部分を占めているそうですが、壁側の方は植物の茎等の大きくて消化しにくいものが大部分を占めているそうです。
この2種類の中身の流れていく速度ですが、モルモットの大腸では、大きな粒の通過速度は速く、小さな粒の方はなかなか出ていかないことが判ったそうです。
澱粉等を含んでいる消化しやすいものは効率よく利用する一方で、分解に時間のかかるものは、さっさと外に捨ててしまうという合理的な作用をしているようです。
草などのセルロースが多く、消化に時間のかかるものに依存している動物にとってはまこと好都合な機能です。
実際は、セルロースなども時間をかければいずれ細菌によって分解消化されて、エネルギーとして利用できるのですが、大腸の容量という問題もありますので、いつまでもため込んでおくと、食べられなくなってしまいます(^^;
<P>動物のエネルギー消費量は、体重の3/4乗に比例するので、体重あたりのエネルギー消費量は小型の動物ほど大きくなります。
そぉいえば、ネズミなんか食ってるか寝てるかですな(^^;;;;
だもんで、、小型の動物が大腸の中に繊維分をゆっくりとため込んで微生物消化をやろうとしますと、消化する前に次の食べ物が入ってきてしまいます。
ですから、細かな粒子を貯める一方で、粗大ゴミ(^^;はとっとと捨ててしまうわけです。
これに比べて、大型の動物の場合は、エネルギー効率が良いので消化しにくいものを食べてもゆっくりと消化できるのだそうです。
通常、本当の意味での草食動物というのは、最低でも5キログラム以上の体重がないとやっていけないのだそうです。(通常ってことは、例外もいるわけだ(笑))