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骨とカルシウム
骨の役割は、体の柱としての骨格だけではなく、必要なときに血液の中にカルシウムを出すことにあるそうです。
骨には血液の10000倍のカルシウムがありますので、血液中の不足分を補う位はすぐに出来ます。
生物は海の中で産まれ(たらしい)ました。あらゆる生物は体の中に海を取り込んで成り立っています。最初の内は外界である海の中に安定した海を作る為に細胞という区切られた世界を作り上げましたが、生物の野心(?(^^;)はその後陸上へ矛先を向けます。
もし海の中だけで生きていくのなら骨は必要なく、くらげの様な形でも充分にやっていけるわけですが、陸に上がろうとした準備で骨が出来上がったという説もあるそうです。
が、芋虫の様な昆虫はどうなんだろう?(^^;
まぁその辺は考えないことにして(^^;;;;
脊椎動物の流れの中で魚は延々と海の中での生活を選んだグループですが、骨を持つ動物としては初期の物ですので骨にカルシウムは沢山ありますが、それを取り出す為に骨を溶かす細胞を持っていません。それに魚は副甲状腺を持っていませんので、カルシウムを骨から取り出す機構も持っていません。
陸に上がるという生物の一大イベントを実行するには、副甲状腺という器官を持って、骨のカルシウムを自由に取り出せる様になることが必要だったわけです。
<P>しかし、骨のカルシウムが一気に血液の中に溶け出してきたら逆にカルシウムが多くなりすぎてしまうことも考えられます。
血液中のカルシウム濃度が下がりますと、副甲状腺は<B>副甲状腺ホルモン</B>を分泌します。これが骨に作用してカルシウムを骨から引き出し、カルシウム濃度を元に戻します。カルシウムが多くなりますと、<B>カルシトニンとい</B>うホルモンが甲状腺から出てきて、骨にカルシウムを入れるのだそうで、魚には副甲状腺はありませんが、カルシトニンは鰓後体(さいごたい)という所に沢山あるそうで、この魚のカルシトニンは人の物よりもはるかに強力な作用があり、骨粗鬆症などの治療薬にはウナギや鮭のカルシトニンが使われるそうです。
人の場合、歳をとるほどカルシウム欠乏が強くなるので副甲状腺ホルモンが沢山作られるようになるそうで、人は産まれてから常にカルシウム欠乏状態に置かれていますので、カルシトニンは出番が少なく、歳を取るほど減るそうです。
カルシトニンは骨からのカルシウムの溶出を抑えているので、これがなくなりますと益々骨からカルシウムが溶け出してますます骨が弱くなるのだそうです。
副甲状腺ホルモンは、骨から血液へのカルシウム供給だけで血中カルシウム濃度を保っているだけではないそうで、血液中のカルシウムは、腎臓で尿の中に排泄されて行くそうですが、全部出て行かれてはあっと言う間にカルシウムがなくなってしまいますので、再吸収をしているのですが、この作用を盛んにさせるのも副甲状腺ホルモンなんだそうです。
もう一つ、副甲状腺ホルモンには大きな役割があります。
腎臓に活性型ビタミンDを作らせる作用です。
活性型ビタミンDは、腸からカルシウムを吸収するのにはなくてはならないものだそうで、通常のビタミンDは食物の中にある栄養素であるビタミンの一つですが、活性型ビタミンDはそれを材料にして腎臓で作りだされるホルモンの一つだそうです。
食物の中にはプレビタミンDというコレステロールの仲間が沢山あるそうで、これが皮膚で紫外線によってビタミンDに変化し、食物中のビタミンDと合流して肝臓へお出かけして、25水酸化ビタミンDというのに変化します。これが腎臓へ行きまして1・25水酸化ビタミンDという活性化ビタミンDに変化するのだそうです。
この様に、副甲状腺ホルモンは何重もの作用をして、血液中のカルシウムの濃度を一定に保っているのだそうです。
病気に関しては後ほど触れようと思いますが、先に書きました、副甲状腺機能亢進症は副甲状腺の暴走で、骨からのカルシウム溶出が止まらなくなる病気ですし、副甲状腺機能低下症はその逆で、血中カルシウムが異常に低くなってしまう病気です。
ちなみに、ほとんど全ての病気にはカルシウムが絡んでいると言ったらちょっと驚くでしょうか?(^^;
ちと血液から離れて、細胞にとってのカルシウムとは何なのかを考えてみましょう(^^)/
これだけ厳密にカルシウム濃度の管理を体が行っているのですからそこにはそれなりの理由が存在するわけで、カルシウムの過不足で体が変調を来すことからも、生物の基本的な構造である細胞に何らかの影響を与えている・・・というのはすぐに想像が出来ます。ということは、一定値のカルシウム濃度というのが細胞にとっては良い環境なわけです。
<B>細胞のエネルギーであり情報源でもあるのは電気です。</B>さぁ、コンセントに指突っ込みましょうヾ(^^;ヲヒヲヒ
細胞膜に流れる電流は非常に弱い物ですが、それは測る基準の問題で、1ミクロンに満たない厚さの細胞膜を建築物の壁並みに置き換えれば、数万ボルトの電流に換算できるそうです(^^;
電流を作るには電位差がなくてはいけません。この差を作っているのが、細胞内と外のカルシウムの10000倍という濃度差だそうです。
これによって、カルシウムの細胞膜を通した移動に敏感に反応を示すことが出来るようになり、この反応こそが生命活動を支えている源になるそうです。
ところで、細胞膜というのは、核シェルターの壁の様な強固な物ではありません。シャボンの泡の膜の様なか弱い(^^;物です。ですから、骨と血液以上に一定の濃度を維持する為に複雑な仕組みが必要になります。
この役割を行っているのがカルシウムチャンネルと言われている物で、細胞膜にある関所です。細胞膜は脂質を基本に出来ていて、カルシウムチャンネルはタンパク質で出来た通路なのですが、特定の条件が揃わないとこの通路は関所を開きません。
その条件というのが、細胞の電位差が変化するときと、やはり細胞膜上にある受容体に外部から特別なメッセージが届いた時です。
副甲状腺ホルモンはこの受容体に働くメッセンジャーの一つで電位差に依存するカルシウムチャンネルに働きかけて、カルシウムを細胞内に入れる働きがあるそうです。(これをちょいと覚えておいてください)
これと逆の働きをするのがカルシウム拮抗剤と言われている物で、これはカルシウムチャンネルを閉じる働きをします。
神経細胞は非常に強い電流を発生し、それを線形線維が電線として伝えます。他の細胞へこの電流が伝わると、次の細胞に電位差が産まれてカルシウムチャンネルが開いてカルシウムが細胞内に入る事があります。そうしますと細胞ではこれが大きな変化として認識され、その細胞自身や他の細胞へ連鎖反応を起こすきっかけになるそうです。
ところが、細胞内のカルシウム真空状態が維持されていないと、カルシウムが少しくらい入ってきてもそれを感じることが出来ず、本来の役目を果たすことが出来なくなってしまいます。
細胞内ではカルシウムが0なわけではありません。細胞は非常に小さな物ですが、その構造は非常に複雑です。
核があり、ミトコンドリアや小包体や細胞内骨格と言われる微小管や微小線維などがあります。
核は細胞の中枢ですし、ミトコンドリアは呼吸と代謝に必要な酵素を持っていますし、小胞体は酵素やホルモンなどを指示に従って作り出す工場みたいな物です。
実際にはこれらの細胞内小器官にはカルシウムが沢山含まれているそうで、その濃度は細胞外である血液とほぼ同じ濃度を示すそうで、本当にカルシウム濃度が低いのは細胞内を循環している細胞液(サイトゾール)なのだそうです。
ということで、カルシウム濃度の落差は細胞外と細胞内の細胞液との間だけでなく、細胞液と細胞内小器官の間にも存在しているそうです。
ミトコンドリアは細胞内にカルシウムがあふれてきますとこれをいくらでも取り込んで細胞液内のカルシウム濃度を健全な低レベルに保っているそうで小胞体の中にはカルシオゾームというカルシウムを蓄えて必要に応じて細胞液にそれを出して濃度調整をすることに専念しているのもいるそうです。
細胞内骨格は、カルシウムを使って伸びたり縮んだりしています。カルシウムがタンパク質のある場所にくっつくとタンパク質分子の長さが減少して縮み、離れるとまた元に戻るのだそうで、細胞のアメーバ状運動や精子の鞭毛運動もそして、筋肉も同じ仕組みで動いているそうです。
生命のスタートがどこかというのは、いろいろと議論されているようですが、受精としますと、カルシウムはここでも非常に重要な役割を果たしています。
精子の重要な役割に受精時に卵子にカルシウムを入れるというのがあるそうで、この瞬間に卵細胞内では急激に遊離カルシウム濃度が上がり、卵子は分裂を開始するのだそうです。
カルシウムは分裂を開始させるだけでなく、卵細胞の表層から分泌を起こさせて、次に来る精子の侵入を妨げさせるそうです。
現在ではカルシウムの流れをモニターで見ることが出来るそうで、精子が付着した場所からカルシウムの波が卵子内で起こるのが判るそうで、この卵細胞内のカルシウムの波を起こさせるのが、カルシウムのプールからカルシウムを取り出すイノシトール三リン酸らしいのですが、精子の何がこのカルシウムの波を作る刺激になるのかはまだ判っていないそうです。
血小板はカルシウムの役割がはっきりしているそうで、血小板が集まって縮み、血液を凝固させるのは、カルシウムが細胞内に入って細胞内骨格を動かしているからだそうです。
電位差等で細胞内にカルシウムが入ったまでは良いのですが、そのままカルシウムが居座りますと、厳密に調整されている細胞内外のカルシウム濃度差が少なくなってしまいます。
ですから、常にカルシウムを細胞外に出す事を行わなくてはなりません。
1:10000という濃度差ですので細胞内には常にカルシウムが入って来ようとします。そこで、カルシウムを細胞外に出すためのカルシウムポンプがあります。動力は有名なATPで、回転扉よろしくカルシウムを外に連れ出しながら自分も分解されていきます。
これの他に物々交換法(?(^^;)もありまして、カルシウム原子1個とナトリウム原子3個を交換する方法で、ナトリウムを3個細胞に入れる変わりに1個のカルシウムを表に運び出します。もう、カルシウムを追い出すためになりふり構わずの状況です(^^;
しかし、ナトリウムが細胞内に入り込みますと、今度はナトリウムを出すためにカルシウムを呼び込むという元の木阿弥になる危険があります(^^;
本来、細胞内にはカリウムが沢山あって、外にナトリウムが沢山あるというのが健全な状況なんだそうで、カルシウムポンプとよく似た、ナトリウム・カリウム交換ポンプというのがいつも働いていて、細胞内にカリウムを取り込んでナトリウムを外に出す働きをしているそうです。
このポンプの具合が万が一悪くなりますと、細胞内にはナトリウムが溜まりだし、それがカルシウムを呼び込む事になり、細胞の健全な活動が阻害される事になります。
人の生命活動は、細胞間の連絡によって保たれています。
ホルモンが作用するときも、神経の電気的な刺激伝播も突き詰めると、細胞にカルシウムが出入りすることによって行われているそうで、もし細胞内外の濃度差が甘くなりますと、そういった刺激が正しく伝わらなくなり個体の正常な維持が出来なくなってしまいます。
体中のあらゆる活動は、非常に微妙なカルシウム濃度の差によって成り立っているのだそうで、そのバランスの崩れは非常に重大な結末を呼んでしまいます。