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感じる大腸
私達は普段、「感覚」というのを頼りに生活しています。
消化器の話しているので、味覚を例に取りますと、私達は結構高性能なセンサーを持っています。
ヨーグルトの酸味とお酢の酸味を私達は区別できますが、これらの酸味の元になっているのは、乳酸と酢酸で、化学構造的にはCH2が1つ多いか少ないかの違いだけでそっくりな物質ですが、はっきりとこの違いを識別できます。
ところで、内臓は感覚をもっているのでしょうか?
胃もたれとか胸やけってのは、胃の感覚だそうですし、便意は直腸の感覚です。
大腸は私達が知らない内に、中身の様子を感じて判断する様な感覚が備わっているそうです。
大腸の感覚で有名なのは中身が入ってきたことを感じる感覚で、これは大腸壁が引き延ばされることによって感じる感覚ですが、これに関しては便秘との関係で比較的研究が進んでいるそうで、この刺激を感じるのは粘膜のすぐしたにある粘膜筋板という薄い筋肉の層だそうで、この他にもいろいろな物質を感じる舌に負けないくらい高性能のセンサーを備えているらしいことが判ってきているそうです。
今までは、大腸の機能を考える場合に、消化・吸収という事に主眼がおかれていたそうですが、最近は感覚や情報処理のことを考えるようになってきているそうです。
大腸の中に生活する細菌はいろいろな単鎖脂肪酸を作っていますが、大腸には、これらを感じて動いたり、塩素イオンを放出したりする仕組みを持っています。
大腸の中をきれいに洗って、酪酸などを入れますと、大腸はぎゅっと縮むそうで、この時に大腸の壁を横切って流れている電流が急に増えるそうです。
これは、粘膜細胞から塩素イオンが分泌されるからなんだそうで、通常は大腸の内外の電位差は15ミリボルト位なのが、これらの場合は20ミリボルト位に跳ね上がるそうです。
そこで、単鎖脂肪酸の種類を変えてこの反応を調べてみたところ、近位結腸では反応が無く、遠位結腸では、数秒で反応が出ることがわかったそうですし、プロピオン酸や酪酸の場合、通常の大腸の中の濃度の1/1000位でも電流が増えるのですが、構造がそっくりな酢酸や乳酸ではまったく効果がないそうでして、大腸が酸の化学構造のちょっとした違いを感じ分けていることが判ったそうです。
ひじょぉ~~に、くさぁ~~いと思っても、暫くすると、臭いが気にならなくなってしまうことが良くあります(^^;
これは、臭いを感じているセンサーが臭いに馴れてしまって感じなくなってしまうからですが、大腸のセンサーも同じ事がおこるそうで、先に酢酸に大腸が反応しないと書きましたが、無菌ラットの大腸は酢酸を感じるそうでして、これは、大腸の中に細菌が居ませんから、酢酸が全く作られていないからで、このラットの大腸に普通のラットの腸内細菌を入れてやりますと、単鎖脂肪酸に常時触れるようになるので、酢酸を感じなくなってしまうのだそうです。特に近位結腸はまったくの無反応になるそうです。
普通のラットの大腸を洗ってからプロピオン酸や酪酸を大腸の中に流しますと、大腸は反応しますが、その直後に同じ酸を倍くらいの濃度で流しても、もう大腸は感じてくれないそうです(^^;
このことから、「慣れ」が1分以内に起こっていることが判るそうで、一旦馴れてしまいますと、10分位しないと敏感になってくれないそうです(^^;