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大腸のはたらき
さて、大腸の大まかな概略説明が終わりましたので、本番です(笑)
食事中に読まない様に(^^;;;
問題:大腸の働きは何ですか?
すぐに答えられる人は少ないそうです(^^;
大抵は、「水とか電解質の吸収」という答えが返ってくるそうです。
実際、大腸では水と電解質(大腸の場合は主にナトリウム)の吸収をしています。が、それだけなのでしょうか?
大腸には、100兆個をはるかに越える細菌が住んでいるそうです。大腸は、これらの細菌を慈善事業よろしく住まわして食わしてやっているだけなのでしょうか?
確かに、細菌がいないと大腸の働きが維持できないと言う側面もあるようですが、そのへんが完全には判っていないようです。
なんで、こんなに謎が多いのかと言いますと、まずは先に書いたように研究者が少ないと言うことがあるそうで、人の大腸よりも羊の胃の働きの方が詳しく判っているという状態のようです(^^;
で、この世界に足を踏み入れても、とにかく実験がやりにくいのだそうで、胃ですと、単純に口から飲ませたり、管を胃まで入れて実験出来るのですが、大腸となりますと、上から入れると、大腸に届くまでには、胃や小腸というとんでもなく吸収能力の高い器官を経由しなくてはならないので、大腸までたどり着く前に全部吸収されてしまうんだそうですし、例えば、内容物を取り出すということ一つでも大変なんだそうです。
肛門から攻撃を仕掛ければ(^^;簡単そうですが、大抵の動物の近位結腸の終わりの所で、大腸が大きくカーブしているので、このカーブをクリアして管やファイバースコープを大腸の奥まで入れるのは現在の技術でも難しいことなのだそうです。
胃の研究などは、牛や羊のおなかの横から胃の中まで通じる穴を開けて、いろいろな物を入れたり出したりするんだそうで、牛のような大型の動物ですと、人の頭が入るような大穴を開けても平気なんだそうです(^^;
ところが、畜産物がだぶつき気味になったため、研究費が得られずに、胃袋屋さんが大腸の研究になだれ込んできて、大腸にも穴を開けるようになってきたそうなので(^^;、
今後は大腸の働きなどももっと判ってくるのではないかという事です(^^;
実際、大腸を取ったら動物はどうなるのか?と問われますと、良く判らないと言うのが、正直なところらしく、ラット等ですと、摘出手術をした直後は体重の伸びが悪いそうですが、数週間経ちますと、普通のラットと同じように成長してしまうそうで、これらのことから、大腸はあまり重要な臓器ではないと思われがちなのだそうです。
けれども、こういったことだけで、その臓器の重要性を判断するのは早とちりです。
無くても生きていけるとなりますと、目や耳、手足さえ同じ様な判断が出来るのですから(^^;
ということで、大腸の大きな役目の一つは、「まっとうなうんちを作る」こと、という事のようです(^^;
では、次に「まっとうなうんち」とは一体どういう代物なのかを見てみましょう(^^;
まずは、正しいうんちとはどういう物なのかというところから(^^;
大腸癌や重度の潰瘍性大腸炎等の場合、大腸を摘出する手術を行いますが、こうなりますと、ふつうのうんちを作れなくなってしまいます。
流動性の高いうんちがしょっちゅう出てくることになり、快適な生活も出来なくなりますし、社会復帰も大変です。
この様なうんちですと、肛門や人工肛門のまわりが荒れやすくなってしまいます。
大腸を摘出した人のモデルとして、小腸の出口を肛門のそばに直接取り付けたラットで調べてみたところ、普通のラットのうんちは長さが約2センチで、直径が5ミリくらいの、細長いコロコロしたうんちだそうですが、手術を受けたラットの場合は、形にならない位に柔らかいのだそうです。
コロコロうんちは、水分が65%であるのに対し、手術を受けたラットのうんちは、水分が85%もあるそうで、大腸が無いと、まず水分の吸収が悪くなることが判ります。
(チェックその1:大腸は水分を吸収しているらしい。)
で、このうんちですが、普通は大腸の中の細菌が単鎖脂肪酸をたくさん作るので、うんちのPHは6~6.5の弱酸性なのですが、大腸を経ないう
んちは、PHが8くらいの弱アルカリ性なのだそうです。
お肌には弱酸性がよろしいようで(^^;、肛門などの周りが荒れてしまうのは、このせいのようです。
(チェックその2:大腸は中身を中和(酸化)しているらしい。)
もう一つ、この実験で実験担当者を悩ませたのが、手術をしたラットのうんちがやたらと飼育用の篭にこびりついてしまうことだそうです。
調べてみますと、コロコロうんちは、水分が高めでもこびりついたりしません。これは、ちゃんと形になるうんちの場合、表面に粘液のコーティングがあって、中身が直接皮膚や毛にこびりつかないようになっている(そうはおもえんのだが(^^;)そうですが、手術をしたラットのうんちにはこの粘液コーティングが無いのだそうです。
(チェックその3:大腸はうんちの形を作って、粘液コーティングをするらしい。)
大腸は、結構複雑なうんち作りの行程を日々こなしているのであります(^^;
うんちの形についてですが、例えば同じ偶蹄目ウシ科に所属している羊や山羊は固くて小さな丸っこいのをポロポロとしますが、ウシや水牛は柔らかくてでかいのをドサッと出します。
この形の違いは、別にその動物の美的センスは関係がないようで(^^;、近位結腸の肛門寄りにうんちの形を作るところがあるのですが、兎やネズミですと、この部分が兎で2センチくらいだそうで、一度に1個づつここでうんちの形を作っています。
この部分の腸の動き方ははっきりとは判っていないのだそうですが、上流からこの部分に中身が流れてきて、ここに入りますと、まず肛門に近い方が閉じて、次に入り口側が閉じ、1個のうんちの分量が決まり、その後、肛門側がゆるむと、出来上がったうんちが次の部分に送られるようです。
この段階のうんちは、まだ完成品ではなく(^^;、柔らかくて色も薄く、形も大きいそうです。
ここでの水分を計ってみますと、ネズミで約85%だそうで、完成品が65%位ですので、更に20%の水分吸収を行って、粘液をつけて仕上げをする行程が待っているわけです(^^;
さて、じゃ人の場合はどうなっているのかと言いますと、はっきりと判っていないようです(^^;
人の場合のうんちの形を作る部分というのは、S字結腸と呼ばれている部分ですが、ここの長さは大体40センチ位ありますので、人は長いうんちを作れるようで、このS字結腸の動きも兎などとは違うようですから、細切れのうんちにならないようです。(^^;
普通、大腸の顕微鏡標本を作るとなりますと、大腸を適当な長さに切断して、縦に切れ目を入れて開き、中身を綺麗に洗って腸の標本を作るんだそうですが、そうなりますと、当然の事ながら中身の状態などは判りません。
しかぁし。大腸を知るには中身の状態が重要なのです(^^;
大腸の開きを作るのではなく、ぶつ切り方向へスライスするのですが、これがちゃんと出来るようになるまで、方法を探るのが大変だったようです(^^;
ではレシピ(笑)
切り出しました大腸を、数秒以内に完全に凍らせます。ゆっくりですと内部で成長する氷の結晶でまともな標本が出来上がりません。
この凍った大腸を1/100ミリ位の厚さにスライスします(^^;
次に、ホルムアルデヒド(ホルマリン)のガスで固定します。固定というのは、タンパク質を変性させる事で、ゆで卵を作る時に卵に起こる変化と同じです。
固定をしないと、染色の段階で粘液が流れてしまうのだそうです。
ここで、液体のホルムアルデヒドではなくガスを使うのは、液体を使用しますと、これまた固定中に粘液が流れてしまうからだそうです。
では、試食の時間です(笑)
こうして作られた、中身入りの大腸の標本を顕微鏡で見ますと、壁と中身の間には見事な粘液の層があるそうですし、うんちにもちゃんとした構造があることが判るそうです。
盲腸や近位結腸では、まだうんちが出来上がる前ですが、この部分では、消化されなかった植物などのかけらがたくさんあって、その間は結構空いているらしいのですが、そこには、細菌がたくさん詰まっているそうです。
また、この部分では、粘液と細菌が混ざった層が粘膜と食べ物のかけらの間に出来ている所も見られるようです。
で、草の様に固くて細長い物が、大腸粘膜と平行に並んでいて、粘膜に突き刺さる様なことが無いという不思議な光景も見られるようです。
この部分は、先の観察旅行でも出てきましたとおり(^^;、中身が行ったり来たりの往復運動をしています。
近位結腸の終わりあたりに出発点と言われる所があり、まずその位置がくびれて、そのくびれが盲腸のどん詰まりに向かってゆっくりと進んでいき、盲腸まで来ますと、来た道を引き返していく(^^;そうで、この運動が中身をしごくような形で混ぜているのだそうです。
で、出発点まで戻ってきたときに、中身がちょっとだけ近位結腸から出ていくのだそうです。
この運動の「味噌」は(^^;、くびれが「完全にくびれない」と言うことだそうで、中身の芯になる部分はあまり盲腸の方へ戻されず、壁に近い部分の中身だけが盲腸の方へしごき戻されていることだそうです。
先に書いた、モルモットの腸の中の構造の部分を思い出していただくと判るのですが、中身の芯になる部分は、消化しやすい物が詰まっていて細菌も沢山います。
この芯の部分は、なかなかうんことして表に出ていかないようです。で、消化しにくい、大型の残骸(^^;は、さっさと遠位結腸の方へ送り出されていきます。
でき立てのほやほやのうんちが入っている遠位結腸では、大型の残骸の割合が多くなり、それらの粒と粒の間も狭くなっているそうで、これは全体的に水分吸収された結果のようです。
遠位結腸では、うんちと結腸粘膜の間に数十ミクロンの厚さの粘液層が切れ目無く続いていて、水分を吸収されるとうんちが縮むので、表面には大きな粒のはじっこなどが飛び出していたりするのですが、そこでも切れ目無く粘液が覆っているそうです。
このうんちの中にも数十ミクロンから1ミリ位の気泡があるそうなので、中に取り込まれた菌が、断末魔のごとく活躍しているらしいとのこと(^^;
ということで、大腸の中では、うんちも均一ではなく、ちゃんと構造を作ってそれなりの動き方をしているのであります(^^;
人の体っていうのは、水分が7割だか占めていますが、消化に関わっているのがどれくらいあるのかって言いますと、えらい大量に水分の出入りが
あります。
ちと、消化管の一日の収支を一覧にしてみましょう。
入ってくる水分
飲食物 2リットル
唾液 1.5リットル
胃液 2.5リットル
胆汁 0.5リットル
すい液 1.5リットル
腸液 1リットル
合計 9リットル
吸収される水分
小腸 7.5リットル
大腸 1.3リットル
合計 8.8リットル
出て行く水分
うんち 0.2リットル
石油缶半分の量の水分を日々出し入れしているわけです(^^;
水分吸収が出来なくなるとどうなるか・・・・
コレラにかかりますと、小腸から一時間に2~3リットルの水が大腸に来るそうで、大腸の水分吸収能力というのは、かなりの物らしいのですが、ちゃんと水分を処理するためにはそれなりの時間、水分が大腸に留まっている事が必要で、一時間に2~3リットルという流速(?(^^;)で入ってこられますと、大腸の容量が2リットル前後ですので、吸収作業をする前に、次の水分がやってくることになり、大腸にとっては、ちょぉ~非常事態です(^^;
こうなってしまいますと、大腸も動きがおかしくなってしまい、くびれなどがうまく出来なくなって、結果、大腸は「ただの管」になってしまい(^^;、入ってきた水をただ肛門に導くだけになってしまいます。
コレラ下痢の場合に出てくるのは、水に少し粘液が交じっただけの物だそうです。
このパターンは、小腸の水分吸収能力が失われた場合ですが、では、逆に、小腸はまともで大腸がおかしくなったらどうなるのでしょうか。
大腸の水分吸収には酪酸という有機酸が必要なのですが、抗生物質等で腸内細菌が減ってしまいますと、酪酸の作り手が少なくなりますので、大腸の水分吸収能力が落ちてしまい、下痢になります。
大腸の一日の水分吸収量は1リットル強ですので、結果、この分が出ていくことになります。
さて、普通のうんちと水っ気の関係ですが(^^;
人の場合、正しいうんちの水分は80%位だそうです。
この数値は小腸の中身の85%と比較して5%位の違いしかありませんが、水っ気の種類がちょっと違います。
中身に関係のある水分としては、結合水と自由水に分けることが出来まして、人の場合、うんちの段階では自由水は全くありません。
結合水・自由水というのは、ゼラチン等に水を少し加えますと、やがてゼラチンにみんな吸収されてしまいます。この水を吸収する能力を「保水力」と言いますが、最初から大量に水を入れますと、ゼラチンは水を吸って膨らみますが、吸いきれなかった水分は周りに残ります。これが、自由水です。
結合水は、ゼラチンに吸われた分の水分です。
さて、大腸の水分吸収力ってのがこれまた凄い。
ラットの実験で、固形物1グラムあたりの水の量を量ったところ、まず、小腸の中身が大腸を経ずに直接肛門に来るようにしたラットの場合、結合水は、4.4グラム、自由水が1.4グラム。水分85%で、保水力は4.3グラム。
正常なラットの盲腸あたりのうんちの場合も、結合水が4グラム位、自由水が1グラム程度、保水力3.5グラム位だそうです。
ところが、これが正常な大腸を通過してきますと、自由水0で、結合水が1.7グラム程度と保水力の半分程度にまで落ちてしまいます。
これは、遠位結腸で水分吸収が行われた結果なのです。
と、書くと、ふぅ~んと思うだけかも知れませんが、保水力ってのは、重力の8000倍の力でうんちを振り回しても(^^;、水が遊離されない力で
すので、その力を振り切って大腸が固形物から水分を奪い去った事になるのです(^^;