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カルシウムと病気
では、次からは、もう少し大きな範囲でのカルシウムの働きを見てみたいと思います。
具体的な病気との絡みって感じで。
カルシウム不足は陸上に生活する全ての動物に共通した運命なんだそうで、寿命が延びれば延びただけ不足の度合いが強くなるそうです。
ただこれは、グローバルな傾向としてで、個人個人の環境や栄養、健康に対する注意度で違いが出てくるものです。
さて、体重50kgの人を例に考えてみます。
この人の体の中には約1kgのカルシウムがあるそうで、その内の99%が骨ですから、990gは骨と言うことになり、残りの10gが血液や筋肉、皮膚など他の場所に分布しています。
血液の総量は約5000ccで、そのうち血漿が3000cc、10mg/dlのカルシウム濃度と仮定すると約300mgが血液中にあることになり、おおよそ骨の1/10000程度の濃度になります。
一日のカルシウム摂取量は、人によって異なるそうですが、日本人の栄養所要量として600mgという数字が上げられています。
ただ、この数字はおおよその目安としてであり、欧米諸国の800mgという数字よりもかなり少ない数値になっています。
この栄養所要量というのは、食物中のカルシウムがどの程度体内に留まるかをおおよそ計算し、これが尿や便の中に実際に失われていく量と見合うかどうかを計算して出すそうです。
この600mgという数字にこだわる人がいるようですが、この数字はまず最低量と考えて良いようで、成長期ですと700~800は必要となるそうですし、妊婦の人は、胎児が新しい骨をどんどん作るために1000mgは取らないと間に合わないそうです。
これが授乳期の赤ちゃんがいる母親ですと、1110mgとなり、普通の成人の2倍という量になるそうです。600mgという最低ラインにどれだけ上積みするかが問題なわけです。
ここで女性の体でカルシウム収支の経年変化を考えてみます。
女性のホルモン分泌は全て妊娠出産を中心に働いていて、若い女性や妊娠中などは、エストロゲンという女性ホルモンが女性らしさを形成するほかに、腸からのカルシウム吸収を助けたり、尿へのカルシウムの流出を抑えたりと働くそうです。また、このホルモンは、腎臓へ直接働いてカルシウムの再吸収を促進するそうで、更年期に入ってエストロゲンが作られなくなると急激に尿に含まれて出ていくカルシウムが増加するそうです。
これが単純な老化現象でないのは、男性の場合と比較すると判るそうで、骨粗鬆症が進んだときのみ骨のカルシウムが血液に流れ尿の中に出てくる
のではないことも判明しているそうです。
このため、エストロゲンの減少する更年期になりますと、急にカルシウムの利用率が減ってしまって、今まで30%利用できていたものが15%しか利用できなくなるということが起こるそうで、こうなりますと食べる量を増やすしかありません。
とうことで、成人の平均的な摂取目標量である600mgという数字に対し、更年期以後の女性の場合1200mgは取らないと収支バランスが崩れるそうです。
欧米でも800mgという成人所要量に対し、閉経後の女性の場合は1500~2000mgという数字を出している人もいるそうです。
ここで出てきている数字は「健康な人が病気にならない為の量」でして、すでに病気になっている人となるとこれまた話は別です(^^;
ただ、骨粗鬆症の場合ですと、一見健康そうに見える人が既にかかっている場合もあり、一定の年齢以上の人で骨粗鬆症のない人が果たして居るのかという問題さえあるそうで(^^;、健康と病気の境目がはっきりしない場合が多いのだそうです(^^;;;;;
丁度、サラリーマンの人は、収支決算が+-0あたりをうろうろしているらしいのですが(^^;
体に入ってくる量と出ていく量が、うまくとれたときは少々の黒字、じゃないと赤字ということで、得てして赤字の場合が多いわけで、おおよそ1日で30mg位は赤字こいている場合が多いようです(^^;さて、このペースで赤字が続くとどうなるのでしょうか。
1ヶ月で900mgの赤字になり、一年の累積赤字は10gになります。
これが20歳から60歳まで続きますと、つもりつもって400gのカルシウムが消え去ることになります。体内のカルシウム量が1kg程度で、そのうちの99%が骨。ということで、骨のカルシウムが半分くらいになってしまいますw(゚O゚)w
ということで、食物から血液に入ってくるカルシウムが必要量以下ですと、血中カルシウム濃度が下がりますので、副甲状腺ホルモンがでまして、骨から血液へカルシウムを補給します。逆の場合は、カルシトニンが出てカルシウムを骨に貯蓄しますが、人の場合圧倒的に不足している場合の方が多く、こうして副甲状腺は徐々に大きくなって歳をとると共に副甲状腺ホルモンの量も増えていくのだそうです。
人が健康であるためには、一億:一万:一というカルシウムバランスが必要なわけですが、カルシウムが不足すると骨から血液へカルシウムが補給され続けますので、骨:血液の濃度の差が減少します。副甲状腺ホルモンには、細胞内へカルシウムを入れる働きがありますので、細胞内のカルシウム濃度が上昇します。
こうして、全体的に濃度差が薄まってしまいます。
ここで登場するのがカルシウムパラドックスと言われる物です。
ここまでの話をまとめますと、カルシウムが不足すると、副甲状腺はホルモンを分泌して骨からカルシウムを取り出して血中カルシウム濃度を保持する。
この副甲状腺ホルモンは細胞の中にカルシウムを入れる働きがある。
すなわち、カルシウムが不足すると、細胞内のカルシウムが増加するのです(^^;
そして、この細胞内にカルシウムが入り込むことによって、正常な細胞の活動が阻害されてしまい、場合によっては細胞は破壊されてしまいます。
適切な管理がされている濃度では非常に重要な役割を果たしているカルシウムが、カルシウム不足になったとたんに害をなす物に変化してしまうのです(ーー;
カルシウムの摂取量が少ないと、骨からカルシウムは消えるは、血管や脳等の通常カルシウムがあまり無いところにカルシウムが増えるわという事になり、これが非常に重大な問題を引き起こします。
具体的な例を挙げますと、レントゲン写真でくっきりと血管が写るような事態になってしまいます(^^;ワライゴトデハナイ
そら困るってんで、骨かじってもダメです(^^;
歳をとると骨の中のカルシウムが減少していくのは、長年にわたってのカルシウム欠乏の結果ですが、それに加えて腸のカルシウム吸収能力が歳をとると落ちることが拍車をかけているそうです。
歳をとると腸自体も吸収力が落ちるのですが、それに輪をかけてビタミンDの働きが落ちるのが大きな原因だそうです。
先にも書きましたが、ビタミンDは、脂溶性のビタミンの一種で、脂肪の多い食物に多く含まれているらしいのですが、歳をとりますと大体脂っこい物は敬遠しがちになります。
ということで、ビタミンDやその前駆体である7デヒドロコレステロールの摂取量が落ちます。
体内で働くビタミンDの多くは、7デヒドロコレステロールが皮膚で紫外線によってビタミンDに変化して出来上がるのだそうで、陽にあたらない
人はビタミンDの合成量が少なくなります。
実際に腸でカルシウムの吸収を助ける活性型ビタミンDは、皮膚で出来たビタミンDが、肝臓で25水酸化ビタミンDになり、さらに腎臓で1・25水酸化ビタミンDになって出来上がるわけですが、肝臓は年齢の影響が比較的少なく歳をとってもその機能はよく維持されているらしいのですが、腎臓の方は歳と共に急激に機能低下するそうで、活性化ビタミンDが作られ難くなってしまうそうです。
ビタミンDの摂取量の指標としては、25水酸化ビタミンDの血中量が15~40ng/dlが正常値で、15以下は明らかに欠乏状態だそうです。
この様な状態ですと、一生懸命カルシウムの多い食事を心がけても腸での吸収がうまく出来ずに終わってしまうことになります。
ここでは、歳をとるとという表現で書きましたが、若くても腎臓の機能が低下すると同じ事が起こります。
慢性腎不全の患者さん等は人工透析を受けて、腎臓の代わりに透析機で老廃物の除去を行います。この装置のおかげで腎臓機能が健全な人と同じ様に長生きできるようになりましたが、この人工腎臓装置では代行できないのが、活性化ビタミンDを作り出す作業です。
慢性腎不全を原因とする骨の変化はいろいろとあるようですが、カルシウムの吸収がうまくできないために、血中カルシウム濃度維持機能によって骨からどんどんカルシウムが溶け出してしまうのが原因の一つになっているのが<B>腎性骨異栄養症</B>というものだそうです。
加齢によるものにしろ腎臓の機能障害によるものにしろ、極度のカルシウム不足になりますので、結果体の各部の細胞内にカルシウムが溜まることになります。脳や神経、心臓等の細胞が機能障害を起こしたらどうなるかは、想像がつくと思います(~~;
しかし、食事からカルシウムをとりすぎて病気になったって話は聞いたことがありません(^^;
じゃ、骨から出て来たカルシウムはなんでそんなに細胞に溜まるのでしょう?このことは、カルシウム45という同位元素を使った追跡で血液中にあるカルシウムの出所が圧倒的に骨側であるということでも確認されています。実際にははっきりしたことは判っていないようですが、量的な違いが理由の一つだろうとのことです。
一日に600mgのカルシウムを食べても、実際に吸収されるのは100~200mgで、それも24時間の内に数回に分けて入ってきます。一回の量は20~70mg程度。
ところが、骨には1kg=100万mgのカルシウムがあり、絶えず血液が触れていていつでも骨からカルシウムを溶かし出そうとしています。骨から血液へ入り、逆に血液から骨へ戻るカルシウムが全体量の1%としても1万mg=10gからになり、腸管と血液の間でやりとりされる量の100倍以上になります。
カルシウムを食べる量を2倍にしても、吸収される量が2倍にはなりません。沢山とればとるほど吸収効率は下がるそうで、少ないと効率よく吸収
するというのがあるそうです(^^;ヤァネ
この腸の機能が働かずに来たカルシウムをガンガン吸収したとしても一回の食事で血液に入ってくるカルシウムは50~150mg程度。これに対して、骨の方は、1万mgが、副甲状腺ホルモンの刺激でちょっとでも増える方向になれば、その10%の1000mg程度はすぐに血液の中に入ってくるらしく、カルシトニンの働きが充分でなく、骨に戻る量が少し少なくなっただけでも同程度のカルシウムが血液中に出てくることになるそうです。
即ち、食物から摂取されるカルシウムの多少の増減は大きな影響が出ませんが、カルシウム不足が発生してそれが骨からカルシウムを出すような形になると、大変なことになると言うことです。
少なくなった場合のことばかり書いてますが、食事から取りすぎている場合はどうなるのでしょう。
血中のカルシウム濃度が少しでも上がりますと、カルシトニンの働きが強くなって骨にカルシウムを貯めていくことができ、骨が強くなりますので、食物から入る程度の量ですと、多いことは望ましいことだそうです。
時々、特異体質でカルシウムを取りすぎるととればとっただけ吸収してしまう人がいるそうで、腸のカルシウム吸収調整機能がうまく働かない人だ
そうです。
この様な人が過剰にカルシウムをとりますと、尿へ出てくるカルシウムの量が増えまして、腎臓結石が出来ることがあるそうです。
これを<B>突発性高カルシウム尿症の腸管吸収型</B>というそうで、腎臓結石を起こす人の一部にはこの様な原因が関係している事もあるそうです。
しかし、大部分の腎臓結石の原因は、カルシウムの過剰摂取ではなく、カルシウムの欠乏が原因だそうで、カルシウムを充分に取っている人には腎臓結石は出来にくいそうです。
なぜ、カルシウムの摂取量が少ないと腎臓結石になるのかは・・・お判りですね(^^;ホネガケッセキニバケル(腸管のシュウ酸は、カルシウムと結合して便として排泄されるが、カルシウムが不足すると、シュウ酸が、腸管より、血液中へ吸収され腎臓まで運ばれるから)(発掘あるある大辞典)
細胞に溜まるカルシウムの方はとにかくありとあらゆる疾患の原因になります。細胞に溜まるくらいですから、カルシウム不足なわけで、骨が弱くなります。
そして、細胞がまわりの出来事にすばやく反応できなくなりますので、目はかすむ、筋肉は力が出ない、物忘れはひどくなる、神経は鈍くなりますし、免疫系の働きも落ちます。
糖に対する反応も落ちますから、糖尿病に似た状況にもなります。
現在病気というのは大きく分けますと、先天的な異常・炎症・循環障害・腫瘍・原因不明の変性の5つで大体説明できるらしいのですが、この全てと関わっているのが代謝障害だそうです。
「最後に復習」です。
副甲状腺ホルモンの働きCaの血中濃度が低下すると、骨からカルシウムを取り出して調節する。
腎臓から排泄されるCaを再吸収して、血中濃度を上げる。
腎臓で活性型プレビタミンDというホルモンを作らせて、腸管からのCaの再吸収を助ける。
Caチャンネルに働いて、Caを細胞内に流入させる。
Caの役割
血中>細胞外>細胞内濃度を一定に保ち、電位差を発生させる。
細胞骨格や筋肉の収縮になくてはならない。
(筋肉にカルシウムが過剰になると、収縮状態が続くということになり、瞼が痙攣したり、足がつりやすくなる等の現象が出るそうです)
神経伝達物質を放出するための酵素などを活性化させる。細胞にカルシウムが入りすぎると、このスイッチが入りっぱなしになるので、情報伝達が混乱することになり、いらいらの原因になるとも言われる。
受精したときに、卵子にCaを送り込んで、細胞分裂を開始させる。血小板を凝固させる。